猿野天国、15歳。
本日、野球部におけるライバル校。
憧れの女の子におけるお兄さんの学校。
セブンブリッジ学院、学生寮に来ております。
なぜかとってもかわいいメイド服を着用して…。
男の浪漫
「う〜〜ん、似合うわぁv
やっぱりアタシのセンスってば最高よねえvv」
「オレ的にはもうちょっとスカートが長い方がいいかな〜〜。
清純な感じがするし〜〜。」
「朕はこれでいいネv天国とーても可愛いアル!!」
「…凄絶 可憐 歓喜 」
「……………………。」
次々に溢れる賛辞の言葉。
言われた本人はそれはそれは嬉しい…
わけはなかった。
「どういうことなんすかこれは〜〜〜〜っ!!!」
学生寮に当然の疑問が轟いたのであった。
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「だからぁ、剣ちゃんの看病を頼んだんじゃないv」
天国がふんだんに振りまく怒りのオーラをものともせず。
天国にメイド服を着せてメイクまでほどこしてくれた張本人、紅印は楽しげに笑った。
「看病ってのは聞いてました。
そして剣菱さんがこの通りベッドに転がってるのも分かりました。
そこそこ具合が悪いのも口元の血液でよくわかりました。
だからってオレにメイド服着せる意味はどのへんにあるのか
もう一度さっきの一行説明文見ても見つけられないんすけど?!!!」
「あのね〜それはオレの一存v」
にっこり笑って言うのは自室のベッドにて臥床安静中の剣菱。
「一存 概略 趣味」
熟語で簡潔にモノを言うのは窓際の雀。
「朕はナース服もイイと思うけどネ。」
可愛い顔して濃ゆい趣味を暴露する桃食。
そんな顔も性格もとことん濃い面々に囲まれ。
天国はめげそうになった。
が、ここでめげては相手の思う壺。
「とにかく!こんな格好させられるんならオレ帰ります!!」
そう言って天国は現在いる剣菱の部屋から逃げようとする。
が。
バタン
無情な音が鳴り響いた。
「ここで逃げたりしたら凪ちゃんにその格好をしてもらうわよ?
アタシ可愛い男の子のほうが好きだけど女の子も嫌いじゃないのよねえ。」
「凪は優しいから、嫌とは言わないよね〜〜。」
ふふふふふふふと恐ろしい顔で笑うバッテリー。
「…ひっ…卑怯者…。」
硬直する天国の後ろからすぃ、と顎に触れる手。
「卑怯 結構」
そして前から腰を撫でるように手を後ろに回す腕。
「せっかくこんな近くに来たアル。早々には逃がさないヨ…?」
(すいません空気の色が物凄く変わってきてるんですけどどおおぉぉぉ!!!)
残る二人のセクハラ状態の迫り方に本気で天国はパニックにおちいりそうであった。
「ああ、ここですぐ脱いでも勿論かまわないけどすぐには服は着れないから
覚悟しなさいねv」
「何なら脱がしてあげてもいいよ〜〜〜v」
(ひぃいいいいいぃいっ!!!!)
もう声も出ないようである。
その時。
「おーい剣菱!!何だ具合悪いって?」
バタンと外側からドアを開ける音が響いた。
紅印の双子の弟、中宮影州だった。
「え、影州!!アンタナンパに行ってたんじゃなかったの?」
紅印は邪魔が入ったとばかりに恐ろしい視線を弟に投げかける。
「え”…っ。いや、今日は可愛いのいないからよ〜つまんねえしついでだと思って…。」
兄の鋭い視線におののきながらも、
同じ野球部のメンバーが剣菱の部屋に勢ぞろいしているのに気づいた影州は怪訝に思った。
「ん?何で雀もワンタンもいる…って、え?」
そしてそこに、見慣れない人物がいるのを見つけた。
紺を基調にした短めのスカートのワンピースに白いフリル付きのエプロン。
同じく紺のストッキングはすらりとした足を際立たせ。
ほっそりとした腰のラインにシンプルなリボンがついていて。
二人の男に触れられて紅潮した頬が何ともいえない艶を出していた。
そして、その瞳は怯えながらもこのままの状態でいる事を拒否する色が見えて…。
とにかく影州のストライクゾーンを貫いた。
(め…めちゃくちゃ可愛い…。)
俗に言わずとも一目惚れである。
その様子に周りの人間は気づく。
((((落ちたか…))))
その4人の意識が自分から離れた瞬間を、天国は目ざとく感じ取った。
そして雀と桃食、二人の腕を振り払い。
入り口で突っ立っていた影州を押しのけて逃げようと走った。
が。
ガシッ
「え…!」
影州の横を過ぎ去ろうとした瞬間。
天国の腕は影州に掴まれた。
「逃がさねえよv」
にっこりと笑った笑顔は。
それはもう紅印にそっくりだった。
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「はい、ご主人様vあ〜んv」
「あ〜〜んv」
「ねえ明美ちゃあんv今度はアタシのマッサージお・ね・が・いv」
「はあいv紅印おねえさまv」
「明美 飲物 所望」
「朕も〜〜。」
「明美チャンvそれ終わったらオレとトランプしよーぜv」
(ちっくしょおおおおおおお)
結局天国はメイドさんをさせられていた。
百歩譲って明美バージョンで…。
まあ、つかまってからは素直に従ったので
身体での奉仕はどうやら免れたようだったが。
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「影州に見つかったのは誤算だったわね…。」
その日の晩。
爪の手入れをしながら紅印は自室で一人つぶやいた。
「ま、あの子はもうアタシのものだけどねえ。」
くすくすと紅印は笑った。
4人で迫ったあの時の、天国の顔。
自分に縋りつくあの瞳。
(帰り道で怒られちゃったけど。)
キス一つで許してくれたんだけどね、と紅印は思い出す。
可愛いかわいい恋人。
今日はちょっといじめたくなって、あんなことした。
勿論他の奴らには手出しさせるつもりは毛頭ないけど。
可愛い所を他の奴に見せたくないけど、見せたくなる。
この微妙な男心。
教えたのは 君だから。
end